診療支援
治療

ばね指,屈指(趾)症
trigger digits,camptodactyly
佐竹寛史
(山形大学整形外科学・准教授)

Ⅰ.ばね指

●病態

・小児では屈筋腱が腫大(Notta結節)し,腱鞘に引っかかるため弾発を生じる.指が屈曲した状態で受診することが多い.

・母指に多く,伸展制限がみられると強剛母指(pollex rigidus)とよばれる.まれにほかの指や多数指罹患もある.

・生下時からみられることはほとんどなく,初発年齢は平均2歳で,男女差や左右差はない.両側にも生じる.

●治療方針

 ストレッチや副子固定が有効で,保存療法により治癒が期待できる.屈曲した指を他動的に伸展し,指を伸ばした状態を副子で保持する.他動的に完全伸展位がとれる場合や,副子固定が難しい場合には経過観察でもよい.年齢とともに伸展制限が改善することが多い.

 全身麻酔が必要な年齢での手術は,適応を慎重に考える必要がある.指の偏位,中手指節関節過伸展および疼痛がみられる場合には手術を検討する.また,ほかの手術で全身麻酔をかける場合があれば,併せて手術を行ってもよい.手術は腱鞘切開術または腱鞘部分切除術を行う.

Ⅱ.屈指(趾)症

●病態

・非外傷性に近位指節間関節が屈曲拘縮した状態で,屈指は主に小指に生じる.

・浅指屈筋,虫様筋,側副靭帯,掌側板,および伸筋機構などさまざまな異常が原因で生じ,先天性疾患に伴っても生じる.

●治療方針

 拘縮が軽度の屈指症には保存療法が有効である.ストレッチや指伸展装具を使用し,日中は動的または静的,夜間は静的な装具あるいは副子固定を行う.改善が乏しい場合には手術を行う.ただし高度の関節変形,後療法が行えない場合には手術は行わないほうがよい.

 60度以上の高度屈指症に対しては病態に応じて手術を検討する.拘縮の原因解除,虫様筋の再建,皮膚の形成,皮膚移植などを考慮する.屈趾症に対してはストレッチ,副子固定,インソールを使用し,合併した変形がなければ小児期に手術は行わない.

■患児・家族説明のポイント

・どちらの疾患も保存療

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?