診療支援
治療

脳性麻痺(整形外科的治療)
cerebral palsy(orthopedic treatment)
伊藤弘紀
(愛知県医療療育総合センター中央病院整形外科・部長)

●病態

・脳性麻痺は早産,低出生体重,新生児仮死などが主な原因とされ,その発生率はおよそ2/1,000出生である.筋緊張のコントロールと運動の協調性が障害されることにより,厚生省の定義(1968)にある「永続的なしかし変化しうる運動および姿勢の異常」を生じる.

・痙直型,アテトーゼ型,失調型,混合型に分類される.

●治療方針

 脳性麻痺児の治療はその重症度,目的によってさまざまである.ここでは主に,下肢の症状に対して整形外科で行っている治療法(内服とリハビリテーションを除く)について紹介する.

A.装具療法

 装具の使用により筋力不均衡から生じた変形のある関節を良好な肢位に保ち,変形や拘縮の進行を予防する.立位や歩行を行う患児では安定性を高め,運動発達訓練を促す効果も期待できる.痙直型の両麻痺児では,幼児期より尖足変形を生じることが多く,短下肢装具を歩行時や夜間に使用する.股関節の内転変形が強い患児では,下肢の交差を抑制して歩行時の振り出しを行いやすくしたり,股関節亜脱臼の進行を予防したりする目的で股関節外転装具や長下肢装具を使用する.

B.ボツリヌス療法

 A型ボツリヌス毒素(ボトックス注)の注射で痙縮による緊張の強い筋を弛緩させることで,随意運動や歩行機能の向上,関節可動域の改善を得ることができる.関節拘縮が生じる前に治療を開始し,理学療法などで運動の再学習をさせることが重要である.装具療法によるコントロールが困難となった尖足歩行や股関節内転変形,膝屈曲変形などが主な適応であるが,上肢や頸部の筋緊張緩和にも利用している.施注時は症例により局所麻酔(エムラクリーム)や全身麻酔を施行している.反復投与により手術への移行時期を遅らせる効果が期待できるが,長期投与による筋弛緩効果の低下も報告されている.

C.手術治療

 上記の治療で改善が得られない場合には,筋肉や腱延長を主とする軟部解離手術や骨切

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