診療支援
治療

アトピー性皮膚炎
atopic dermatitis
海老原 全
(東京都済生会中央病院・院長)

治療のポイント

・保湿剤によるスキンケアと抗炎症薬外用が基本となる.

・皮疹の状態に適した強さの外用薬を使用する.

・十分に炎症を抑制し,皮疹がおさまっている状態を維持していくことがポイントである.

●病態

・アトピー性皮膚炎は,増悪・寛解を繰り返す,瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患児の多くはアトピー素因をもつと定義される.アトピー素因については,①家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患)があること,または②IgE抗体を産生しやすいことがあげられる.

・病態から,皮膚の最も外側にある角層の乾燥とバリア機能異常という生理学的な異常に,さまざまな刺激反応,アレルギー反応が加わって生じ,慢性に経過する炎症とかゆみが特徴的な疾患と考えられ,皮膚バリア機能障害,アレルギー性炎症,瘙痒の3つの面から治療を考える必要がある.

●治療方針

 治療の最終目標は症状がないか,あっても軽微で日常生活に支障がなく,薬物療法もあまり必要としない状態,あるいは日常生活に支障をきたすような急な悪化が起こらない状態に到達し,維持することである.

 アトピー性皮膚炎の治療方法は,小児においても①薬物療法,②スキンケア,③悪化因子の検索と対策の3点が基本になる.これらはいずれも重要であり,個々の患児ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切に組み合わせる.

 皮膚炎に対しては副腎皮質ステロイド,タクロリムスなどの抗炎症外用薬を用いてすみやかに炎症を軽快させ,寛解後は保湿剤の外用などのスキンケアを継続すると同時に,皮疹の再燃を防ぐため週2~3回程度,ステロイドまたはタクロリムス外用薬をもともと皮疹があった部位に継続して外用するプロアクティブ療法を行い,寛解を維持していく.小児という理由で皮疹の状態に合っていない弱いランクのステロイド外用薬を漫然と使用すべきで

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