●病態
・皮脂腺は在胎20週頃より発達して皮脂を分泌し,胎脂を形成している.
・皮脂腺は手掌足底を除く全身にみられるが,特に脂漏部位である顔面,頭部に最も多くみられる.新生児期から生後2か月頃までは血中アンドロゲンのDHEAが高値で,その影響により皮脂の分泌が亢進している.
・乳児脂漏性湿疹は生後2~8週頃にまず前頭部や眉毛部に黄白色の乳痂が付着し,その後,額,頬,口囲にも紅斑,丘疹や脂漏性の痂皮,落屑がみられる.頸部,腋窩,陰股部などの間擦部位,臍周囲にも紅斑を生じることがある.
・鑑別疾患である乳児のアトピー性皮膚炎は生後2~6か月頃より口囲,両頬に浸潤性の紅斑がみられ,次第に体幹四肢に拡大し,かゆみが強い.皮疹が2か月以上持続する,家族にアトピー歴がある,血中IgE値が高値であることより診断できる.
・新生児痤瘡は男児に多く,生後2週以降に額,眉間,頬に毛孔一致性の丘疹,小膿疱,白色面皰がみられる.
・このような痤瘡様の発疹より脂質好性のマラセチア属真菌が検出されることがあり,neonatal cephalic pustulosisとよばれる.マラセチア菌は脂漏性湿疹の病因にもなる.
●治療方針
新生児痤瘡と乳児脂漏性湿疹はいずれも皮脂分泌の亢進に伴って一過性にみられる疾患で,生後3か月以降に皮脂の分泌が減少するとともに自然に軽快する.
治療はスキンケアが主体で,入浴時に顔面はベビー用石鹸,頭部はベビー用シャンプーをよく泡立てて洗浄し,38~40℃の弱いシャワーで十分に洗い流す.乳児脂漏性湿疹で前頭部や眉毛部に厚い痂皮を付着している場合には,入浴の30分程度前にベビーオイルやオリーブオイルを痂皮の部分に塗布して,軟化させてから除去する.
新生児痤瘡は通常スキンケアのみで1~2か月で軽快するため,外用は保湿剤が主体で,時に抗菌薬を使用するが,尋常性痤瘡に用いる外用薬は必要ない.
脂漏
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/ヘパリン類似物質《ヒルドイド》
- 治療薬マニュアル2024/クロベタゾン酪酸エステル《キンダベート》
- 治療薬マニュアル2024/プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル《リドメックス》
- 治療薬マニュアル2024/ケトコナゾール《ニゾラール》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/脂漏性皮膚炎
- 今日の小児治療指針 第17版/尋常性痤瘡(にきび)
- 今日の治療指針2023年版/脂漏性皮膚炎,ふけ症
- 今日の小児治療指針 第17版/眼瞼炎,結膜炎
- 今日の治療指針2023年版/汗疱,あせも,わきが,多汗症
- 今日の治療指針2023年版/にきび(尋常性痤瘡),酒皶
- 今日の小児治療指針 第17版/口内炎,鵝口瘡,舌の疾患
- 今日の小児治療指針 第17版/円形脱毛症,抜毛癖