診療支援
治療

魚鱗癬
ichthyosis
河野通浩
(秋田大学大学院皮膚科学・形成外科学・教授)

●病態

・魚鱗癬は皮膚の角化や角質剥離の異常により,全身に鱗屑を生じる疾患である.

・小児例はほぼ遺伝性である.遺伝性魚鱗癬には出生時に症状を認めないタイプ(遅発性)と,出生時から症状を認めるタイプ(先天性)があり,さらに先天性には①皮疹のみの群と,②他臓器障害を伴う群とがある.

・多いのは,遅発性である尋常性魚鱗癬(1/250人)とX連鎖性劣性魚鱗癬である.尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子変異が原因であり,バリア機能低下によるアトピー性皮膚炎との関連も知られている.

●治療方針

 遺伝性魚鱗癬には根治療法はなく,対症療法を行う.生活指導や遺伝相談も重要である.

A.外用療法

 尿素軟膏(ウレパール,ケラチナミン),サリチル酸ワセリン,活性型ビタミンD3含有軟膏(オキサロール)などを用いる.サリチル酸ワセリンは掌蹠などの厚い角層を剥がすのに有効であるが,広範囲の外用ではサリチル酸中毒に注意する.活性型ビタミンD3含有軟膏も,大量に外用する際は高カルシウム血症に注意する.ヘパリン類似物質(ヒルドイド)や白色ワセリンなどの保湿剤の併用も効果がある.

Px処方例 下記の薬剤を症状に応じて適宜用いる.

➊ウレパールクリーム・ローション 1日2~3回 適量を患部に塗布

➋ケラチナミンクリーム 1日2~3回 適量を患部に塗布

➌ヒルドイドソフト軟膏・クリーム・ローション・フォーム 1日2~3回 適量を患部に塗布 季節により基剤を変更するとよい

➍オキサロール軟膏 1日2回 適量を患部に塗布

➎サリチル酸ワセリン軟膏(10%) 1日1~2回 適量を患部に塗布

B.全身療法

 重症例ではエトレチナート(チガソン)を用いることがある.0.5mg/kg/日から開始し,適宜増減し,効果が得られる最小量を継続する.

 有効であるが口唇炎や口腔粘膜乾燥が必発で,骨端線の早期閉鎖による成長障害を起こすことがあるため,小児の

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