診療支援
治療

癤(せつ)・蜂窩織炎(・丹毒)
furuncle・cellulitis(・erysipelas)
多田讓治
(光生病院皮膚科(岡山))

●病態

・癤(せつ)は,皮膚の小外傷,浸軟などが誘因となり,黄色ブドウ球菌が毛包や脂腺に感染・増殖して発症する.毛包一致性円錐状の有痛性紅色結節で,通常は単発である.局所熱感,圧痛を伴い,大きくなると頂点に膿疱を生じる(膿栓).項部,殿部などに好発する.毛包炎,癤が多発・追発するものが癤腫症である.汗腺膿瘍,単純性疱疹などとの鑑別が必要なときがある.

・蜂窩織炎は,真皮深層から皮下組織に及ぶ急性びまん性化膿性疾患で黄色ブドウ球菌によることが多く,丹毒はより浅い真皮の化膿性炎症でA群β溶血性レンサ球菌(化膿レンサ球菌)による場合が多いが,両者の区別は必ずしも容易でない.顔面・四肢に好発し,境界不明瞭な局所の発赤・腫脹で始まり,局所熱感・圧痛・自発痛のある浸潤の強い紅斑局面となる.発熱などの全身症状も伴う.小児では,顔面,特に頬部・眼窩周囲に生じる割合が高い.接触皮膚炎,癰(よう),結節性紅斑など局所の発赤・腫脹をきたす疾患が鑑別にあがるが,特に壊死性筋膜炎には注意する.

●治療方針

 黄色ブドウ球菌に感受性の高い抗菌薬を選択する.MRSAによることもあり,必ず細菌培養・感受性試験を行う.

A.全身療法

 新世代経口セフェム系抗菌薬やペネム系抗菌薬などから選択する.MRSAの場合はβ-ラクタム系抗菌薬にホスホマイシンを併用して有効な場合が多いが,高度耐性MRSAでは抗MRSA薬を投与する.投与開始後3日経っても改善がみられなければ薬剤を変更する.

Px処方例 下記➊➋のいずれかを用いる.発熱など全身症状がある場合は➌を,MRSAの場合は➍とする.

➊セフゾン細粒小児用 1回3~6mg/kg(成分量として) 1日3回

➋ファロムドライシロップ小児用 1回5mg/kg(成分量として) 1日3回

➌パンスポリン注 1日40~80mg/kg 1日3~4回に分けて静注

➍セフゾン細粒小児用 1回3~6

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