診療支援
治療

表皮水疱症
epidermolysis bullosa
西江 渉
(北海道大学大学院皮膚科学・客員教授)

治療のポイント

・多くは新生児期に発症し,外的刺激を受ける部位に水疱を生じる.

・軽症例から致死的症例まで,重症度は病型によってさまざまである.

・治療は対症療法が主体だが,低固着性ドレッシング材が有用である.

・小児慢性特定疾病の1つに指定されている.

●病態

・軽微な外力に伴い容易に水疱を形成する疾患群で,皮膚の表皮真皮間接合を担う各種蛋白をコードする遺伝子に変異を生じ,発症する.

・水疱形成部位により,単純型(ケラチン5/14,プレクチン),接合部型(ラミニン332,XⅦ型コラーゲン,α6・β4インテグリン),栄養障害型(Ⅶ型コラーゲン),Kindler(キンドラー)症候群(キンドリン1)の4型に大分類される(括弧内は主な病因蛋白を示す).

・わが国では単純型と栄養障害型が多い.単純型の多くは優性遺伝性で,軽症例から中等症の症例が多い.栄養障害型は,優性・劣性遺伝性いずれも存在し,中等症から重症例の多くは劣性遺伝性である.爪甲脱落,手指の癒着,手足の棍棒状変化,食道狭窄,有棘細胞癌の合併,慢性腎不全など,さまざまな合併症を伴う.

●治療方針

 根治療法は存在せず,対症療法が主体となる.在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料を算定すると,ガーゼや包帯なども提供可能である.特定保険医療材料として保険請求可能な,低固着性ドレッシング材が有用である.

A.局所療法

 新鮮な水疱は内容液を穿刺排液し,低固着性ドレッシング材あるいは軟膏を塗布した非固着性ガーゼで保護する.抗菌薬含有軟膏は,感染症を併発した際のみ使用する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊メピレックスライト(低固着性創傷被覆材) 数枚 びらん・潰瘍面へそのまま貼付

➋白色ワセリン 1日1~2回 メロリン(非固着性ガーゼ)で被覆

B.全身療法

 創部の感染が疑われる際は,感受性のある抗菌薬の全身投与を行う.栄養状態が悪化した症例では,液体高カロリー

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