●病態
・色素細胞母斑は,色素細胞(メラノサイト)に形態や機能が類似した母斑細胞の増生により生じる良性の皮膚病変である.一方で,扁平母斑は表皮基底層のメラニン色素の増加により生じる.
・臨床症状は,色素細胞母斑では褐色から黒色調の色素斑~隆起性病変であり,扁平母斑は淡い茶褐色調の扁平な色素斑となる.
・色素細胞母斑は,出生時より存在するか否かによって先天性と後天性に区別され,病理組織学的な母斑細胞の存在部位によって境界部型(表皮真皮境界部のみ),複合型(境界部と真皮内),真皮内型に分類される.
・発症時期は,後天性色素細胞母斑だと乳幼児~小児期に生じることが多いが,思春期以降に発生することもある.扁平母斑は乳児期からみられることが多い.
・先天性色素細胞母斑の場合,成人の時点で長径が20cmを超えることが予想されるような大型のものだと発生頻度は非常に低いものの,病変から悪性黒色腫が出現することが報告されている.また腰背部や後頭・項部に大型の病変が存在したり,全身の皮膚に播種状に病変が多発したりしていると,脳・脊髄で母斑細胞の増殖がみられ中枢神経症状を生じることがある(神経皮膚黒色症).
・後天性色素細胞母斑の1型であるSpitz(スピッツ)母斑は,乳幼児に発し比較的成長が早く,悪性黒色腫との鑑別を要する.
●治療方針
基本的には経過観察のみでよいが,大型の先天性色素細胞母斑などで整容的に問題がある場合や,スピッツ母斑のように悪性黒色腫をはじめとした皮膚がんとの鑑別を有する場合は,外科的切除を行うことがある.扁平母斑に対しては,レーザー治療が行われることがあるが,一般的に難治である.
神経皮膚黒色症が疑われるときには,造影MRIで脳軟膜などのメラノーシスの有無を確認するとともに,症候性となった場合には症状に応じた治療が必要となる.
乳幼児期からみられる扁平母斑が6個以上存在する場合には,神
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