Ⅰ.睫毛内反症
●病態
・乳幼児の睫毛内反症はほとんどが下眼瞼にみられ,生直後より睫毛が眼球表面に触れているのが確認される.
・睫毛が触れている範囲が内眼角付近のみの軽度のものは自然改善することが多いが,下眼瞼の横幅の1/2を超える例では改善しにくいとされている.
・改善しない例では,成長に伴い睫毛も太くなり,角膜びらんの発生や,流涙,異物感,羞明,視力低下などの症状を引き起こすため,細隙灯顕微鏡検査で経過観察する必要がある.
●治療方針
角膜上皮障害や明らかな自覚症があれば手術治療の適応である.手術には,結膜円蓋部から睫毛下の皮膚に通した合成非吸収糸を縫合するだけの通糸埋没法と,余剰な皮膚と眼輪筋を切除して睫毛下の皮下と牽引筋腱膜とを縫合する切開法がある.前者には再発がみられることから,近年は切開法を選択することが多い.
手術は全身麻酔下に行い,抜糸が難しい年齢では皮膚の縫合は自然脱落する吸収糸を