治療のポイント
・「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン」の治療アルゴリズムを基本とする.
・発症から3か月間は鼓膜換気チューブ留置術を行わないことを原則とする.
・鼓膜換気チューブの選択は抜去・脱落後の鼓膜穿孔残存率も加味して検討する.
・症例ごとの遷延化因子に基づいた保存的治療が必要である.
●病態
A.病態
・滲出性中耳炎(OME)は「急性炎症の症状や所見を伴わずに中耳貯留液を認める状態である」と定義される.したがって貯留液の成因を問わない.免疫機能の未熟性や不完全な耳管機能に関与する多くの病原因子が,疾患の成立と遷延に多元的にかかわる.
・本疾患と鑑別を要する急性中耳炎後の無症候性の中耳貯留液の75~90%は3か月以内に消退するため,積極的な治療対象とならない.鼻すすり型耳管開放症の関与が,近年注目されている.
・小児のOMEは一般に7~8歳以降に自然治癒する傾向にあるが,口蓋裂,Down症候群では耳管機能不全により高率に本疾患を合併し,しかも難治である.
B.診断
・鼓膜所見,ティンパノメトリーで中耳貯留液の存在を確認する.鼓膜は陥凹し,中耳貯留液の色調を反映し,黄~茶褐色であることが多い.ティンパノグラムはB型またはC型を呈する.
・中耳腔の陰圧形成に関与する鼻すすり癖の有無を確認する.鼻すすり型耳管開放症に伴うOMEのX線像で,乳突蜂巣の発育が比較的良好であることが多い.
●治療方針
治療の目的は聴力改善と,より重篤な中耳炎への移行を予防することにある.
A.発症3か月未満(発症時期が不明なら診断からの期間)
自然治癒を期待し経過観察を行う.このとき,より早期の治癒を期待してL-カルボシステインを併用してもよい.疾患の遷延化に関与すると考えられる併存症があれば,併せて薬物療法の対象とする.鼻すすり癖があればやめさせる.
1.薬物療法
Px処方例 下記➊を用いる.
➊ムコダイン薬DS 1回10mg/