●病態
・慢性中耳炎(図1a図)とは,鼓膜緊張部に穿孔が存在し,中耳腔の感染・炎症が反復する状態をいう.急性中耳炎や外傷性鼓膜穿孔の不完全治癒,滲出性中耳炎に対して行われた鼓膜換気チューブ留置後の鼓膜穿孔の残存などが原因となる.
・中耳真珠腫は,胎生期の扁平上皮の中耳腔への遺残に起因する先天性真珠腫(図1b図)と,生後に鼓膜上皮が中耳腔に陥入することにより生じる後天性真珠腫(図1c図)に分けられる.骨破壊を伴いながら増大し,進展例では側頭骨内や頭蓋内の合併症を引き起こす.
●治療方針
A.慢性中耳炎
1.保存的治療
耳漏出現時には,まず感染制御のための抗菌薬投与を行う.本症の感染は外耳道,鼓膜穿孔経由で生じるため,耳管経由の感染で成立する急性中耳炎とは起炎菌が異なる.耳漏の細菌培養検査結果を参考に感受性のある抗菌薬を使用するが,結果が判明する前には黄色ブドウ球菌,緑膿菌などの感染を念頭におく.
抗菌