診療支援
治療

鼻出血
epistaxis
飯村慈朗
(東京歯科大学市川総合病院耳鼻咽喉科・准教授)

●病態

・小児では,鼻をほじる・こするなどの直接擦過(指性)による出血が多い.そのため小児の鼻出血は反復する特徴があるが,なかには全身的な疾患が隠れていることがあり注意が必要である.

 a)局所的原因:外傷,炎症,腫瘍,異物,術後などがあげられる.小児では,指性による外傷・炎症が原因のことが多い.まれではあるが思春期の男児に多い若年性鼻咽腔血管線維腫など,腫瘍による出血も忘れてはならない

 b)全身的原因:出血性疾患,循環器疾患,薬物性,特殊感染症,遺伝性疾患などがあげられる.出血性疾患には凝固因子異常や白血病などがあり,遺伝性疾患ではOsler(オスラー)病などがあげられる

・鼻中隔粘膜のなかでもKiesselbach(キーゼルバッハ)部位は特に血管が豊富な箇所である(図1).Kiesselbach部位での血管は筋層が薄く,外的刺激によって容易に損傷しやすく,小児の鼻出血は指が届きやすい同部位からの出血がほとんどである.いったん痂皮が形成され止血したかのように見えても,鼻いじりを繰り返すことで,再出血は日常的に生じる.

●治療方針

 問診により局所的原因,全身的原因を鑑別することは重要であり,そのうえで鼻出血の原因・出血点を判断する.視診では,Kiesselbach部位など明視できる範囲の出血点を検索する.口腔内粘膜・手足に出血斑・紫斑がある場合や,吐血するほどの大量出血時は,全身的原因や腫瘍を疑い精査する.

A.出血が続いている場合

 Kiesselbach部位からの出血では,坐位の状態で下を向き,両鼻翼を母指と示指でつまみ,鼻翼を正中に向かって強く圧迫止血することが応急処置として有用である(圧迫止血法,図2).咽頭に流れた血液は吐き出してもらうようにする.圧迫法を5分以上続けても止血されない場合は,アドレナリンを浸した綿花を鼻腔内に挿入し,再度圧迫法を試みる.血管怒張や露出血管が

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