診療支援
治療

歯内療法
endodontic treatment
苅部洋行
(日本歯科大学小児歯科学・教授)

 歯の内部にある歯髄組織に生じる病変に対して処置を行い,歯の保存をはかる治療法である.小児における歯内療法は乳歯と萌出間もない幼若永久歯が治療対象となる.乳歯は萌出が完了した時点で生理的歯根吸収が開始されるため,常に歯根の吸収状態に注意しなければならない.一方,幼若永久歯では歯根が未完成のため,できる限り歯髄を保存し,歯根完成を促すような配慮が必要となる.

●治療方針

 歯髄の保護あるいは歯髄組織に生じた病変の拡大防止のために行う歯髄処置,感染した根管による根尖周囲組織への炎症の波及を防止するために行う感染根管治療に大別できる.

A.歯髄処置

1.歯髄鎮静療法

 歯髄充血,急性単純性歯髄炎により,象牙質に持続的な刺激が加わり歯髄の知覚反応が亢進した場合,刺激を遮断し,歯髄の炎症を消退する目的で行う.酸化亜鉛ユージノールセメント,ユージノール,グアヤコールを用いて露出した象牙質面を覆うことで鎮静を得る.

2.覆髄法

 歯髄を生活したまま保存することを目的にした治療法で,歯の欠損の大きさや象牙質の感染程度,露髄の有無を考慮し,覆髄法を選択する.

a.間接覆髄法 軟化象牙質除去後の歯髄に近接した象牙質面に対し,覆髄剤を用いて,歯髄保護と修復象牙質の形成促進を目的として行う.覆髄剤には水酸化カルシウム製剤を用いることが多い.

b.暫間的間接覆髄法 齲蝕が深部まで進行し,齲蝕象牙質をすべて除去すると露髄の危険性がある場合,齲蝕象牙質一層を残して,水酸化カルシウム製剤を貼薬し仮封する.一定期間後に修復象牙質が形成されてから改めて齲蝕象牙質を除去し,永久修復を行うことで生活歯髄を保存する方法である.臨床症状がなく,歯髄が幼若で生活反応が高いことが条件となる.

c.直接覆髄法 外傷や窩洞形成時に偶発的に露出した歯髄面に水酸化カルシウム製剤を直接覆髄し,歯髄保護とデンティンブリッジの形成による露髄面閉鎖を目的と

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?