診療支援
治療

在宅での嚥下障害のケア
淺野一恵
(重症心身障害児・者施設つばさ静岡・医務部長)

A.在宅障害児にとっての食事

 子どもにとって食事は成長・発育や健康維持に寄与するだけでなく,生体リズムを整え,安らぎを得,健やかな家族関係形成を促進し,在宅生活を支える大きな原動力になる.

 経口摂取による栄養法は生理的であり,可能な限り経口での栄養摂取を試みる.経口で十分な栄養が摂取できない場合は経腸栄養の導入を考慮するが,その場合も食事を楽しめるように支援する.

B.摂食嚥下障害をきたす病態

 a)解剖学的異常:唇顎口蓋裂,小顎症,喉頭軟化症,食道狭窄などがある.

 b)嚥下機能障害:脳性麻痺,筋ジストロフィー,ミオパチー,薬剤の副作用などがある.

 c)全身性疾患の影響:呼吸障害,耳鼻科疾患,胃食道逆流症,てんかん発作などがある.

C.嚥下障害の症状

 食事中のむせやつかえ・喘鳴・痰・呼吸障害,食事摂取量減少,食事時間延長,食事拒否,体重増加不良,発熱,低栄養などがある.

D.在宅診療での評価ポイント

 唾液の嚥下状態,吸引回数が増加していないか,食事中の呼吸音の異常,発熱頻度,身長・体重,体格指数(BMI)の継時的変化,必要に応じて血液検査で栄養状態や炎症反応を把握する.

E.嚥下障害の重症度に応じた対応方針

 食事は子どもや家族のQOLに大きく関係するため,リスク面の判断だけでなく子どもの全体像を見ながら対策を講じる.

1.軽度

 唾液の嚥下状態が良好で咳嗽反射が明確に認められ,口腔内吸引をほとんど要さない子どもでは,経口摂取を安全に実施可能である.食事形態や姿勢の調整を行い,安全に摂取できる方法を確立していく.

2.中等度

 口腔内吸引を日に数回要する子どもでも,経腸栄養を併用しながら経口摂取可能な場合がある.定期的に呼吸状態や発熱の有無を確認し,食事形態や姿勢,安全に経口摂取できる量を検討する.

3.重度

 唾液の嚥下が不良で,口腔内吸引を頻回に要する子どもでは,経腸栄養を主とした栄養摂取を行

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