診療支援
治療

在宅での終末期の呼吸困難の管理
天野功二
(あおぞら診療所しずおか・院長(静岡))

●病態

・呼吸困難とは,呼吸時の不快な感覚のことであり,疼痛と同じく主観的な苦痛症状である.したがって多呼吸や低酸素血症がないからといって,患者が呼吸困難を感じていないとはいえない.

・非がん疾患の子どもの終末期に出現する苦痛症状としては呼吸困難が最も多く,また小児がんにおいても約40%の子どもが呼吸困難を経験するとの報告がある.

・在宅で過ごしている終末期の子どもが経験する呼吸困難では,気道や肺実質,胸郭の疾患に起因する呼吸不全があることが多いが,不安や抑うつ,恐怖心などの心理的要因も大きく関与している.

・呼吸困難を適切に管理するためには,その原因だけではなく苦痛の程度や悪化要因,随伴症状などを含めた包括的な評価が不可欠である.

・呼吸困難の程度の評価ツールとして,主観的な評価が可能な子どもの場合は,疼痛と同じくNRS(numeric rating scale)やVAS(visual analogue scale)を用いることが可能である.自己評価が難しい子どもでは,第三者による代理評価法として成人領域で有用性が検証されているSTAS(support team assessment schedule)を用いることも1つの方法である.

●治療方針

 呼吸困難の原因として,感染症や気道狭窄,胸水貯留,貧血など治療可能な病態があるかどうかを見きわめ,全身状態や予後を考慮したうえで治療適応を検討する.

 病態の改善を目指した治療と同時に,次にあげる3つのアプローチによる緩和治療を開始する.

A.デバイスを用いた緩和

 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:non-invasive positive pressure ventilation)や排痰クリアランスを向上するデバイス(吸入器,吸引器,排痰補助装置など)は,呼吸困難の原因となっている病態によっては有用である.

 酸素投与は低酸素血症を伴う場合に有効

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