診療支援
治療

虐待された子どもたちの処遇と心のケア
interventions and psychological treatment of abused children
宮本信也
(白百合女子大学人間総合学部発達心理学科・教授)

●病態

・わが国の「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)では,児童虐待を①身体的虐待,②心理的虐待,③性的虐待,④ネグレクトの4種類としている.虐待は,子どもの心身に大きな影響を与える.

・身体面では,さまざまな外傷・熱傷・骨折,放置による感染症や基礎疾患の重篤化,後遺症としての身体障害・視覚障害・知能障害,そして死亡がみられる.

・心理・行動面では,内在化問題として自尊心低下,自己否定観,無気力,不安,抑うつなどが,外在化問題として反抗,暴力,性的逸脱行為,反社会的行動などがみられる.幼児期には,過度の警戒心(反応性アタッチメント障害)や馴れ馴れしさ(脱抑制型対人交流障害)などの対人行動の問題がみられることもある.

●治療方針

A.処遇

 わが国では,児童虐待防止法により,虐待されている子ども(以下,被虐待児)およびその疑いがある子どもに気づいた人には通告義務が課されている(罰則規定はない).通告先は,市町村(児童福祉所管課),児童相談所,福祉事務所である.支援方針の検討は,児童相談所単独,地域の関係機関が集まるケース会議や要保護児童対策地域協議会などで行われる.

 通告後の流れは,通告→事情聴取・調査→虐待の判断→安全性の確認(虐待重症度の判断)→(状況に応じて被虐待児を一時保護)→支援方針の検討・決定→支援開始(状況に応じて在宅支援あるいは児童福祉施設入所)となる.

B.心のケア

 被虐待児の心のケアは一般小児科での診療範囲を超えるものである.一方,在宅支援となった被虐待児が家庭や集団生活のなかで示す問題について,地域の小児科医が相談されることはありうるであろう.そのようなときに行う助言の参考として対応の概要を示す.

1.行動問題のコントロール

 被虐待児が示す行動問題,特に攻撃性と反社会的行動は支援する側を困惑させ,時に支援意欲を低下させることもある.挑発したりするような行動

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