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脳死判定と脳死下臓器提供
水口 雅
(東京大学大学院発達医科学・教授)

 「臓器の移植に関する法律」(以下,臓器移植法)の改正案は2009年7月に公布,2010年7月に施行された.これに伴い,15歳未満の小児に対する法的脳死判定が,臓器移植を前提条件とする場合に限って,実施可能となった.今回の法改正に伴い,いくつかの重要な変更点があった(表1).

A.法的脳死判定基準

 6歳以上15歳未満の学童・少年に対しては,従来の判定基準(竹内基準)が適用される.ただし,収縮期血圧に関しては新たに年齢別の基準が設けられた.また,生後12週以上(早産児では修正齢12週以上)6歳未満の乳幼児に対しては,新しい小児脳死判定基準が用いられる(図1).

1.6歳以上の小児および成人における法的脳死判定基準(竹内基準)(1985年刊行,1991年改訂)

a.対象例

 a)器質的脳障害により深昏睡および無呼吸をきたしている症例.

※ここでいう無呼吸とは,人工呼吸に逆らう,あるいは人工呼吸中に自発呼吸がみられないという意味で,検査項目にある無呼吸テストは必要としない.

 b)原疾患が確実に診断されており,それに対して現在行いうるすべての適切な治療手段をもってしても,回復の可能性がまったくないと判断される症例.

b.除外例

 a)小児(6歳未満)

 b)急性薬物中毒

 c)低体温(食道温などの深部温で32℃以下)

 d)代謝・内分泌障害

c.判定上の留意点

 a)中枢神経作用薬(投与量,方法,期間,最終投与からの経過時期,薬物の有効時間などに対する考慮が必要),筋弛緩薬の影響(神経刺激装置を用いる)を除外する.

 b)収縮期血圧は90mmHg以上.

   注:13歳未満では65+(年齢×2)mmHg以上.

d.判定基準

1深昏睡 Japan Coma Scale(3-3-9度方式)で300.

2瞳孔 左右とも4mm以上,固定.

3脳幹反射の消失 対光,角膜,毛様体脊髄,眼球頭,前庭,咽頭,咳反射(左右に区別で

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