今日の診療
治療指針
救急
手技

四肢血管・神経損傷
vascular and nerve injury of the extremities
鳥谷部荘八
(国立病院機構仙台医療センター・形成外科医長)

頻度 割合みる

ニュートピックス

・指神経や橈骨神経知覚枝に対して自家神経移植に代わり,人工神経移植(神経再生誘導手術)が普及してきた.ドナーの犠牲もなく臨床成績も自家神経に比べ遜色ない.

治療のポイント

・血管損傷は虚血を見逃さない.理学所見や画像検査により,すみやかに診断し,必要に応じ,可及的早期に血行再建する.

・神経損傷は損傷程度により治療が異なる.指の切創・裂創での「見逃し」が問題であり,救急外来においては損傷なしと断定して患者に伝えてはならない.

Ⅰ.血管損傷

◆病態と診断

・開放性,閉鎖性損傷で病態と対応が異なる.多くは緊急造影CTを要する.

・開放性損傷:創より出血が認められ(すでに凝血塊で止血されている場合もある),損傷部位は明らかであり,遠位の阻血や軟部組織損傷に対する対応が求められる.

・閉鎖性損傷:側副血行の存在により診断が難しく,阻血の所見も乏しいことが多い.

・臨床上重要な所見として,開放性損傷では「拍動性出血」「血管雑音」「増大する血腫」「末梢脈拍低下」の阻血4徴候である.閉鎖性損傷ではcapillary refilling time(CRT)で判断する.爪床を5秒間圧迫し解除後,爪床の赤みが回復するまで2秒以上なら,緊急治療の対象と考える.

◆治療方針

A血行再建か切断か(前腕・下腿より近位)

1.切断

 完全切断かつ温阻血6~8時間以上,修復不能な脛骨神経断裂,末梢組織の損傷が著しい場合.全身状態の悪化,合併症が重篤な場合.

2.血行再建

 上記以外の血管損傷.橈骨動脈や尺骨動脈のどちらか一方の損傷でも手指の機能を考えて再建が望ましい.

B阻血時間短縮への対策

 阻血時間短縮にはtemporary vascular shuntの導入を考慮する.以下の2つがある.

1.temporary intravascular shunt

 断裂した大血管断端の遠位と近位にチューブをインターポジ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?