治療のポイント
・高度な徐脈である①洞性徐脈(<50/分)あるいは②洞房ブロックまたは洞停止があり,循環の破綻や意識消失など重篤な症状を呈する場合に早期に循環の正常化をはかる目的で一時的に行うものである.
・緊急ペーシングには経皮ペーシングと経静脈ペーシングがあり,経皮ペーシングは,手技が容易ですぐに開始できるため緊急で使用できる.しかし,痛みを伴うため,意識がある患者に使用する場合は鎮静が必要である.また,皮膚異常や心室細動にも使用できない.
・徐脈は心筋梗塞などによる房室ブロック,洞不全症候群,さらに電解質異常や薬剤によるものなど,さまざまな原因がある.
・緊急では経皮ペーシングを行い,継続してペーシングが必要な場合は経静脈ペーシングやペースメーカの植込みを検討する.
・頻脈性不整脈に対するオーバードライブペーシングやQT延長に伴う心室細動を繰り返す場合などにおいても,ペーシングを行って不整脈発生の抑制を試みることがある.ただし,経静脈ペーシングが適応となる.
◆病態と診断
・米国心臓協会(AHA)では,高度な徐脈である①洞性徐脈(<50/分)あるいは②洞房ブロック(Ⅱ度あるいはⅢ度)または洞停止(>3秒)があり,循環不全や意識消失発作がある場合に適応としている.基本的にはアトロピン(1mgを3~5分ごと,最大投与量3mg)の反応をみて,効果がないと判断した場合に適応となる.ただし,緊急時には時間的猶予がほとんどない場合があるので,アトロピン投与の反応を早急に判断し,緊急ペーシングを行う.
・緊急ペーシングには経皮ペーシングと経静脈ペーシングがあり,それぞれ利点,欠点があるので使い分けが必要である.血圧低下時などすぐに実施できるのは経皮ペーシングである.緊急ペーシングはあくまで一時的なもので,洞不全症候群が持続する場合にはペースメーカの植込みを検討する.
A適応
・高度な徐脈により血圧低下