今日の診療
治療指針

腎疾患 最近の動向
深水 圭
(久留米大学主任教授・腎臓内科学)

◆病態と診断

ACOVID-19と急性腎障害

 COVID-19関連急性腎障害(AKI:acute kidney injury)は,高死亡率と関連し,入院下の全死亡の独立したリスク因子であることが知られている.その病態としては,直接的な影響と,間接的な影響が考えられている.腎病理を用いた検討では,急性尿細管障害が主体であり,電子顕微鏡にて尿細管上皮細胞や糸球体上皮細胞にSARS-CoV-2ウイルスの存在が確認されている報告や,逆にウイルスは検出されないとの報告もある.直接的なウイルスのAKIへの関与はいまだ不明である.腎病理所見からは,collapsing glomerulopathyを呈する場合や血栓形成からAKIを生じる症例も報告されている.内皮細胞障害による血栓性微小血管障害も一因である.間接的要因には,サイトカインストーム,補体活性化,体液過剰,人工呼吸管理,低酸素,薬剤性腎障害,下痢などによる脱水などが挙げられるが,長期的にはAKIから慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)へ移行した場合の腎予後については今後明らかとなるであろう(→図解)

BOncoNephrology

 本邦では,がん患者の25%程度にCKDが合併しているとされており,CKD患者が従来の抗がん剤に加えて分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を必要とする機会が増加している.2016年,4学会(日本腎臓学会,日本臨床腫瘍学会,日本癌治療学会,日本腎臓病薬物療法学会)により「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」が刊行された.しかしながら,上記薬剤の使用頻度の問題でエビデンスが不十分であった.今回,6年ぶりに「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2022」として改訂された.新たなCQとして「透析患者および腎移植患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨される

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