治療のポイント
・HBV関連腎症とHCV関連腎症では,それぞれ膜性腎症と膜性増殖性糸球体腎炎といった病理組織像を呈することが多い.
・肝腎症候群の診断基準は近年改訂されたが,治療の中心は血管収縮薬とアルブミン投与である.
Ⅰ.肝炎ウイルス関連腎炎
◆病態と診断
AB型肝炎ウイルス関連腎症(HBV腎症)
・HBe抗原を含む免疫複合体が腎糸球体に沈着することで,膜性腎症の病理像を呈すると考えられている.臨床的にはネフローゼ症候群を呈し,血清免疫複合体は80%程度の症例で上昇している.
・HBVに持続的に感染している患者において,HBV関連抗原(HBe,HBs,HBc抗原)が免疫グロブリンや補体と同様のパターンで糸球体へ沈着していること,あるいはHBe抗原からHBe抗体へのseroconversionに伴い尿所見の改善がみられた場合,HBV腎症と考えてよい.
BC型肝炎ウイルス関連腎症(HCV腎症)
・HCVを含む免疫複合体の形成にIgM型リウマトイド因子からなるクリオグロブリンの関与が指摘されており,病理組織像はⅠ型膜性増殖性糸球体腎炎が多く,クリオグロブリン血症,低補体血症を伴う.
C肝硬変関連腎症
・肝硬変患者では血清IgA高値となることが知られており,IgA沈着を伴う糸球体腎炎を生じた報告がある.臨床経過は軽度の蛋白尿や顕微鏡的血尿が主体であり,ネフローゼ症候群を呈するものは少ない.組織型はメサンギウム増殖性糸球体腎炎を呈することが多い.
◆治療方針
AHBV腎症
HBV肝炎を治療することで腎障害の軽快が期待できる.インターフェロンや核酸アナログによる治療を行う.膜性腎症を呈した場合,HBe抗原がseroconversionすれば軽快することが多く,小児では自然寛解の報告もみられるが,成人では必ずしも予後良好ではなく,自然寛解はまれである.ウイルス性肝炎に対してインターフェロンあるいは核酸アナログ
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