頻度 情報なし
治療のポイント
・尿路や全身性の基礎疾患による感染症かどうかで単純性と複雑性に分類し,それぞれで予想される原因菌が異なる.男性の腎盂腎炎は複雑性として扱う.
・慢性複雑性腎盂腎炎では,急性増悪による有症状時のみ抗菌薬投与を行う.
・治療は抗菌薬治療が基本であるが,急性複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞を伴う場合はドレナージが必要である.
・3日程度の初期治療で改善がみられない場合は,画像検査や培養検査の再検査を行う.
◆病態と診断
A病態
・腎盂腎炎は腎盂・腎実質の炎症による尿路感染症で,ほかの尿路感染症と同様に多くは細菌の逆行性感染により起こる非特異的炎症である.臨床経過により急性と慢性に分けられ,尿路基礎疾患や全身性の基礎疾患の有無によって,単純性と複雑性に分けられる.複雑性の要因には,尿路結石や尿路悪性腫瘍,排尿障害,さらに糖尿病などの易感染状態も含まれる.
・急性単純性腎盂腎炎は膀胱炎を契機に発症することが多く,性的活動期の女性に好発する.急性複雑性腎盂腎炎のうち尿路閉塞を伴う場合は,腎盂内圧上昇による菌血症や敗血症などの重症化リスクがあり,泌尿器科によるドレナージが必要になる.
・慢性腎盂腎炎のほとんどが慢性複雑性腎盂腎炎である.高齢者に多く,基礎疾患や合併症の治療が行われなければ繰り返し発症することが多い.単純性腎盂腎炎とは原因菌が異なるため,急性増悪時にはより広域の抗菌薬を選択する必要がある.
B診断
・典型的な臨床症状として,発熱,患側の側腹部痛や肋骨脊柱角(CVA:costo-vertebral angle)叩打痛がある.嘔気・嘔吐などの消化器症状を認めることも多い.重症例ではseptic shockに陥っていることもある.
・尿検査では膿尿・細菌尿を認め,血液検査では白血球の上昇や,CRP上昇・プロカルシトニン上昇などの炎症所見を認める.
・エコーやCTなどの画像検査で,尿路
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