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GLエビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020
治療のポイント
・両腎容積が750mL以上かつ,腎容積増大速度がおおむね5%/年以上である場合には,利尿に伴う有害事象や肝機能障害に注意しながらトルバプタンの治療を行う.
・薬剤治療だけではなく,塩分制限,飲水励行,肥満の回避など生活指導も同時に行うことが重要である.
◆病態と診断
A病態
・常染色体優性(顕性)遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)は両側の腎臓に多数の嚢胞が進行性に発生・増大し,60歳までに約半数が末期腎不全に至る,最も多い遺伝性腎疾患である.
・肝嚢胞,高血圧,脳動脈瘤,心臓弁膜症などの合併症が認められる全身性疾患である.
・原因遺伝子としてPKD1(85%)とPKD2(15%)が同定されている.孤発例と考えられる例も5%にみられる.
B診断
・CT,MRIまたは超音波断層像で両腎に一定数以上の多発性嚢胞を認め,多発性単純性腎嚢胞など鑑別すべき疾患を除外して診断する(図).
◆治療方針
ADPKDの進行を抑制する治療として,降圧療法,バソプレシン受容体拮抗薬であるトルバプタン治療の薬物治療に加え,塩分制限,飲水励行,蛋白質制限,肥満の回避などの生活指導も重要である.
嚢胞感染に対しての抗菌薬治療はニューキノロン系抗菌薬が推奨される.
脳動脈瘤に対してはMRAによるスクリーニングを3~5年ごとに行い,発見された場合,必要に応じて治療を行う.
A進行を抑制する治療
1.降圧療法
本態性高血圧と比較して若年発症が多い.降圧療法は尿中蛋白排泄量と総腎容積を減少させ,腎機能障害進行を抑制する可能性がある.ADPKD患者に対する血圧管理は,血圧140/90mmHg未満を降圧目標とし,尿蛋白陽性患者では130/80mmHg未満,50歳未満のeGFR>60mL/分/1.73m2 かつ降圧療法に忍容性がある患者に限って1
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