今日の診療
治療指針

慢性骨髄性白血病
chronic myelogenous leukemia(CML)
木村晋也
(佐賀大学教授・血液・呼吸器・腫瘍内科)

頻度 あまりみない(新規発生は約1.5人/10万人/年)

GL造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

ニュートピックス

・CMLの治療薬は,生涯服用する必要があると考えられてきたが,一定の条件を満たせば,治療を中止しても再発をしない患者が存在することがわかってきた.

治療のポイント

・新規薬剤が続々と導入されており,また治療中止も可能となってきたため専門医と密接に連携する.

・適切な治療で,ほぼ健常人と同じ生活が送れることを理解する.

・治療は長期にわたるため,長期の有害事象にも注意をする.

◆病態と診断

A病態

・慢性骨髄性白血病(CML)は,著明な白血球や血小板の増加を特徴とする多能性造血幹細胞の腫瘍性疾患であり,9番と22番染色体の相互転座で生じるフィラデルフィア(Ph)染色体によって産生されるBCR-ABL蛋白が発症原因である.

・抗がん剤で治療をしても,慢性期,移行期,急性転化期を経てほとんどの患者が数年で死亡する難病であった.しかしABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI:tyrosine kinase inhibitor)の出現によって,慢性期から治療すると10年生存率が90%を超す疾患となった.

B診断

・70%以上の患者は検診などで,自覚症状がない状態で,白血球や血小板の増加などにより偶然発見される.白血球分画では好塩基球比率の増加をしばしば認める.確定診断には,典型的な末梢血所見・骨髄所見に加えて,Ph染色体あるいはBCR-ABL1遺伝子の証明が必要である.

◆治療方針

 TKIは,ABL蛋白のATP結合を競合的に阻害し,CML細胞に効果を示す.TKIを用い,より深い寛解状態を得ることが肝要である.Ph染色体陽性細胞比率が減少することを細胞遺伝学的効果,BCR-ABL1 mRNAが減少することを分子遺伝学的効果とよぶ.現在,最も重要視されているのは分子遺伝学的効果であり,末梢血を用

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