今日の診療
治療指針

無月経・乳汁漏出症候群
amenorrhea-galactorrhea syndrome
福田いずみ
(日本医科大学教授・内分泌代謝・腎臓内科学分野)

頻度 〔無月経・乳汁漏出症候群をきたす病態のなかでプロラクチノーマ(下垂体プロラクチン産生腫瘍)の発生率は約30人/人口10万人/年である〕

治療のポイント

・高PRL血症では,まず原因となる病態を鑑別する.薬剤性の可能性がないかの確認は重要である.

・プロラクチノーマではドパミン作動薬が第1選択であり,PRLの低下と腫瘍の縮小がみられる.

◆病態と診断

A病態

・無月経・乳汁漏出症候群の原因は高プロラクチン(PRL)血症である.

・PRLは視床下部のドパミンにより抑制的な調節を受けて下垂体前葉から分泌される.PRL分泌は甲状腺刺激ホルモン分泌促進ホルモン(TRH)により促進される.

・PRLは乳汁の合成・分泌を促進する.過剰になると性腺刺激ホルモンを抑制して性腺機能低下,乳汁漏出,骨粗鬆症をきたす.

・原因にはプロラクチノーマ,薬剤性のほか,視床下部・下垂体茎の病変(ドパミンの作用障害),原発性甲状腺機能低下症(TRH分泌の賦活による),腎不全(PRLの排泄障害)などがある.

B診断

・厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業,間脳下垂体機能障害に関する調査研究班から「高プロラクチン(PRL)血症の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」が提唱されている.

・女性では月経異常不妊,乳汁分泌,男性では性欲低下,勃起障害などを呈する.

・血中PRL値は複数回測定し,いずれも施設基準値以上であることを確認する.女性では妊娠を除外する.

・一般的にプロラクチノーマではPRL値と腫瘍サイズが相関する.血清PRL値が200ng/mL以上で下垂体にマクロ腫瘍があればプロラクチノーマと診断できる.下垂体腫瘍は大きいが,PRLの上昇が軽度の場合は非機能性腫瘍による下垂体茎の圧迫(stalk effect)の可能性を考える.

◆治療方針

Aプロラクチノーマ

1.薬物療法

 ドパミン作動薬による薬物療法が第1選択であり

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