今日の診療
治療指針

先天性副腎過形成症(21-水酸化酵素欠損症)
congenital adrenal hyperplasia
水野晴夫
(藤田医科大学教授・小児科学)

頻度 (10,000~20,000人に1人)

GL21-水酸化酵素欠損症の診断・治療のガイドライン(2021年改訂版)

治療のポイント

・生涯にわたり,ステロイドの投与が必要である.

・不足する糖質コルチコイドおよび鉱質コルチコイドを補充するのみならず,ACTH分泌を抑制することにより,副腎アンドロゲン産生亢進を抑制し,健常小児と同等の成長,成熟・性腺機能を確保することである.生理的補充量の投薬ではACTHは抑制しきれない.

◆病態と診断

A病態

・副腎皮質ステロイドホルモンの生合成の異常によるコルチゾール欠乏と副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生により副腎腫大を伴う疾患群を先天性副腎過形成症と総称する.

・ほとんどが常染色体潜性(劣性)遺伝疾患で,21-水酸化酵素欠損症(21-OHD)は先天性副腎過形成症のなかで高頻度である.

・コルチゾールの欠乏はACTHの刺激によりコルチゾール前駆体の蓄積を引き起こし,この過剰な前駆体は副腎アンドロゲン産生の経路に向かう.

・哺乳不良や体重増加不良などの副腎不全症状が,新生児期に出現する.

・21-OHDは成長や性成熟のみならず,生命予後に影響する疾患である.

B診断

・診断に最も有用な検査項目は血液中の17-OHP値の上昇である.

・保険未収載の検査ではあるが,尿中ステロイドプロフィルは診断に有用である.

・哺乳力低下・体重減少・嘔吐などの副腎不全症状の出現に加えて,低Na血症や高K血症などが認められれば,すみやかに治療を開始する.

◆治療方針

 糖質コルチコイドであるヒドロコルチゾンやプレドニゾロン,鉱質コルチコイドであるフルドロコルチゾンの補充療法を行う.フルドロコルチゾンは電解質,血漿レニン活性,体重増加などをみながら投与量を設定する.

 発熱性疾患(>38.5℃),胃腸炎,全身麻酔を伴う手術,大規模な外傷などの状況では,糖質コルチコイドを増量して投与する.

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