今日の診療
治療指針

乳癌
breast cancer
菊森豊根
(名古屋大学病院准教授・乳腺・内分泌外科学)

頻度 割合みる~よくみる(女性:年齢階層により大きく異なる)

頻度 あまりみない(男性:女性比1%程度)

GL乳癌診療ガイドライン2022年版

ニュートピックス

・多重遺伝子アッセイであるOncotype DXが保険適用となった.現在臨床で用いられている免疫染色により評価される女性ホルモン受容体発現(ER,PgR),ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2),Ki67,および,TNM分類,組織学的グレードから推定される悪性度・化学療法に対する感受性を腫瘍組織中の多数の遺伝子発現の程度より正確に推定できる検査法である.この検査法により,補助療法としての化学療法の必要性をより客観的に推定できるようになった.

治療のポイント

・早期乳癌(治癒可能な乳癌)に対する治療目的は治癒であり,原発巣の切除および潜在的な微小転移巣の根絶により達成される.

・進行再発乳癌(治癒不可能な乳癌)に対する治療目的はQOLを保ちながらの生存期間の延長であり,主に適切な薬物療法による.

・いずれの病態に対しても,サブタイプに応じたガイドラインに準拠した標準的治療を行うことが,患者に最大限のメリットをもたらす可能性が高い.

◆病態と診断

A病態

・乳管上皮細胞/小葉上皮細胞の腫瘍性増殖である乳管癌/小葉癌,および特殊型に大別できるが,乳管癌が8割ほどを占める.

・初期は乳管内もしくは小葉内に限局し非浸潤癌とよばれるが,一方,浸潤癌は周囲組織(脂肪織,皮膚,筋肉など)へ浸潤し,時間の経過とともに領域リンパ節転移,遠隔転移をきたすものを指す.非浸潤癌は通常腫瘤を形成しないが,浸潤癌では腫瘤を形成する.

・ER,PgR,HER2,Ki67の状態によりルミナルAまたはB(ホルモン受容体陽性タイプと称されている),ルミナルHER2(トリプルポジティブタイプとも称されている),HER2タイプ,トリプルネガティブなどのサブタイプに分類され,それぞ

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