今日の診療
治療指針

アレルギー性気管支肺真菌症
allergic bronchopulmonary mycosis(ABPM)
井上純人
(山形大学医学部附属病院病院教授・第一内科)

頻度 割合みる(気管支喘息をはじめアレルギー性鼻炎やじん麻疹といったさまざまなアレルギー疾患を合併することが多く,国内外の報告では喘息患者の2%前後に発症していると報告されている.わが国では約1.5万人,全世界で約500万人の患者がいると考えられている)

GLアレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き(2019)

ニュートピックス

・従来の診断基準ではABPMの診断が困難な場合が多いとされていたが,本論文で提唱されている新しい診断基準による方法では,感度・特異度ともに約90%と,従来の診断基準と比較して非常に高い精度による診断が可能であることが示されている(J Allergy Clin Immunol 147:1261-1268,2021).

治療のポイント

・真菌に対するアレルギー反応が病態の中心であることから,副腎皮質ステロイドの全身投与が基本となる.

・副腎皮質ステロイドによる治療が長期にわたる例もあることから,その有害事象に注意する.

・副腎皮質ステロイドによる治療に抵抗性の例や有害事象が問題となる例では抗真菌薬の併用や,抗真菌薬単独での治療が考慮される.

◆病態と診断

A病態

Aspergillus fumigatusCandida albicansBipolaris属,Schizophyllum commune(スエヒロタケ)などの真菌が気道内に定着し,Ⅰ型,Ⅲ型およびⅣ型アレルギーが誘導されることが原因である.

・好酸球は本疾患の病態形成に最も重要と考えられており,特徴的な所見とされている気管支内に嵌頓する粘液栓(mucoid impaction)を形成する.

・粘液栓の形成には好酸球が過剰な活性化によって細胞内顆粒蛋白を放出するとともに,核内のDNAを網状に放出するextracellular trap cell death(ETosis)とよばれる特殊な細胞死が関与しているとさ

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