頻度 あまりみない
治療のポイント
・脊髄障害が進行する場合,脊髄腫瘍の可能性を念頭におく.
・脊髄腫瘍を疑った場合は,脊髄外科専門の医師がいる施設への紹介を検討するべきである.
・脊髄腫瘍には摘出手術が第1選択となる.
・脊髄腫瘍手術では神経モニタリングを駆使し,神経機能温存に努める.
・脊髄腫瘍術後の神経症状の回復は,手術前の神経症状が軽度であるほど良好である.
◆病態と診断
A病態
・脊髄腫瘍とは脊髄,脊髄神経(神経根),あるいはそれらを包む硬膜や脊椎から発生する腫瘍の総称である.
・脊髄腫瘍は硬膜の外側にできるもの(脊椎腫瘍),硬膜の内側で脊髄の外側にできるもの(硬膜内髄外腫瘍),脊髄の内部に発生するもの(髄内腫瘍)に分類される.
・脊椎腫瘍のなかで最も多い転移性腫瘍の治療では,原疾患の治療をあわせて行うことが大切である.
・硬膜内髄外腫瘍には,神経鞘腫,髄膜腫が多く含まれ,脊髄あるいは神経根を圧迫することにより症候を呈する.
・髄内腫瘍には上衣腫,海綿状血管腫,神経膠腫,血管芽腫が含まれる.腫瘍そのものによる症候に加え,腫瘍に付随した空洞や出血,あるいは脊髄浮腫により症状の拡大進行や急性増悪を認める.
B診断
・脊髄腫瘍の頻度は,脳腫瘍の約1/10とされる.神経症候を呈する患者に遭遇した場合,神経診察により脊髄障害の有無を評価し,罹患脊髄レベルを同定しなければならない.
・罹患脊髄レベルのMRI(T2強調画像,矢状断)により診断を確定する.特に,脊椎腫瘍,硬膜内髄外腫瘍,髄内腫瘍に分類し,治療方針を決定する.
・脊髄炎症性疾患や脱髄性疾患との鑑別のために脳脊髄液検査を行う場合がある.
・腫瘍が脳脊髄に多発する場合や,ほかの臓器腫瘍を伴う場合は,神経線維腫症,フォン・ヒッペル・リンドウ病などの遺伝疾患との関連を考慮する.
◆治療方針
脊髄腫瘍治療の目的は症状の改善と増悪予防,そして病理診断の確立である.