今日の診療
治療指針

アルツハイマー病
Alzheimer's disease(AD)
小野賢二郎
(金沢大学教授・脳神経内科学)

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GL認知症疾患診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・2021年6月に,早期ADの臨床症状悪化を抑制する最初の治療薬として抗アミロイドβ(Aβ)抗体であるAducanumabが米国食品医薬品局(FDA)に条件付きではあるが迅速承認された.本邦においても2020年末にPMDAに申請されたが,専門家部会は2021年12月に「現時点でのデータでは有効性が判断できない」と指摘し,継続審議とした.

治療のポイント

・現在の薬物療法では大幅な改善は難しいことを,患者・家族だけでなく,生活や治療にかかわる医師や介護士も理解しておく必要がある.

・現在のAD治療薬としては,コリンエステラーゼ阻害薬,グルタミン酸受容体拮抗薬の使用が推奨される.

◆病態と診断

A病態

・アルツハイマー病(AD)は,進行性の認知機能障害を呈し,わが国では認知症の約60%を占めるといわれている.

・病理学的には老人斑,神経原線維変化,神経細胞死が特徴的である.老人斑はアミロイドβ(Aβ)が凝集して細胞外に沈着したもので,一方,神経原線維変化はタウが過剰にリン酸化され,細胞内に沈着したものである.

B診断

・緩徐に進行する認知機能障害の存在を,問診や神経心理学的検査などの情報から確認していくことがAD診断の基本である.

・患者に病識の欠如を伴っている場合もあり,家族からの情報も参考になることが多い.

・治療可能な疾患である甲状腺機能低下症やビタミン(B1,B12)欠乏症,HIVなどの感染症などを除外するために,血液検査を施行する.

・頭部CTやMRI検査では内側側頭葉の萎縮が特徴的で,脳血流SPECTやFDG-PETでは後部帯状回や両側側頭・頭頂葉の血流,糖代謝の低下が認められる.アミロイドPETでは早期の段階からアミロイド蓄積が認められる.

・脳脊髄液検査におけるAβ42の低下,総タウあるいはリン酸化タウの上昇は,診断とし

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