今日の診療
治療指針

ギラン・バレー症候群
Guillain-Barré syndrome(GBS)
越智博文
(愛媛大学大学院教授・難病・高齢医療学)

頻度 あまりみない

GLギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2013

治療のポイント

・早期の治療開始が予後を規定するため,本疾患を強く疑った時点ですみやかに免疫療法を開始する.

・免疫療法では免疫グロブリン大量静注療法と血漿浄化療法の有効性が確立しており,両者の有効性はほぼ同等とされる.

・副腎皮質ステロイドによる単独治療の有効性は否定されている.

・球麻痺,呼吸筋麻痺,不整脈や血圧脈拍変動,膀胱直腸障害などの自律神経障害,低Na血症や抗利尿ホルモン分泌不適合症候群などの内分泌・代謝異常,血栓塞栓症,疼痛などに対しては支持・対症療法が必要となる.

・球麻痺や呼吸筋麻痺,循環器系の自律神経障害を認める場合には集中治療室で管理する.

・早期からリハビリテーションを開始する.

◆病態と診断

A病態

・約70%では,発症前4週間以内に上気道炎や胃腸炎などの先行感染を認める.

・先行感染病原体が同定されるのは約20%と低率である.同定可能であった場合には,カンピロバクター(Campylobacter jejuni)が最も多く,そのほかサイトメガロウイルス,EBウイルス,肺炎マイコプラズマ,ヘモフィルスインフルエンザ菌などがある.ジカウイルスやSARS-CoV-2ウイルスも先行感染因子となる.

・先行感染病原体の糖鎖構造に対する抗体が,末梢神経の糖脂質に反応して神経障害を惹起する「分子相同性機序」が想定されている.

・約60%では,糖脂質抗体が急性期の血清中に検出される.抗体価は発症時に最も高いことが多く,経過とともに低下する.

・糖脂質抗体のサブクラスは,ほとんどが強い補体活性能を示すIgG1またはIgG3であり,補体介在性ニューロパチーと考えられている.

・神経伝導検査や病理組織学的検査により脱髄型と軸索型に分類される.また,障害される末梢神経により,運動感覚型,純粋運動型,純粋感覚型,自律

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