今日の診療
治療指針

アルツハイマー病のBPSD
behavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD)in Alzheimer's disease
中村雅之
(鹿児島大学大学院教授・精神機能病学)

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GL認知症疾患診療ガイドライン2017

GLかかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第2版)(2016)

ニュートピックス

・疾患修飾薬(aducanumab)の製造販売承認が継続審議となった(2021年12月22日).

治療のポイント

・BPSDは介護負担を著しく増大させるため,早期介入が望まれる.

・薬物療法の前に心理社会的要因の軽減を目指す.

・せん妄との鑑別を要するが,両者併存も多い.

・薬剤性にBPSD類似症状を生じることもあり,被疑薬の減量などを検討する.

・非薬物療法では十分な対応ができない場合に薬物療法を検討する.

◆病態と診断

A病態

・アルツハイマー病の行動・心理症状(BPSD)の原因は不明なことが多い.

・心理社会的要因に加え,生物学的には遺伝的要因,コリン作動性ニューロンの機能障害や神経伝達物質の関与が示唆されている.

B診断

・BPSDは,「知覚,思考内容,気分や行動の障害といった,認知症患者にしばしば出現する症状」と定義されており,症状は多彩である.

・アパシーや抑うつなどの気分・感情の障害,もの盗られ妄想などの精神病症状,易刺激性,攻撃性や興奮,多幸性,脱抑制,衝動性などの過活動性の症状がみられることがある.

・せん妄は,「急性発症」の軽度から中等度の意識障害であることがBPSDとの鑑別の要となる.

◆治療方針

 BPSDに対する心理社会的要因の軽減を目指した非薬物療法について検討する.パーソン・センタード・ケアを心がけ,多職種チームで情報を収集しアプローチするのが原則である.薬剤性にBPSD類似症状が出現する場合があり,薬歴を分析し,被疑薬の減量や中止,変更などの検討も重要である.薬物療法は,保険適用外の使用が含まれることがあり,必ずインフォームド・コンセント(IC)を行う.少量から開始し,改善後に漫然と継続せず漸減を試みる.漢方薬に甘草を含

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