頻度 よくみる〔約100人に1人(生涯有病率)〕
GL統合失調症薬物治療ガイドライン(2016)
治療のポイント
・発症2~5年間は治療臨界期(critical period)とよばれ,治療予後を左右する.
・初回エピソードの治療目標は,①遅滞なき薬物療法と精神症未治療期間(DUP:duration of untreated psychosis)の短縮,②すみやかな寛解による機能維持,③服薬アドヒアランス獲得による再発予防,④自殺防止,とまとめられる.
◆病態と診断
A病態
・原因不明.体質と環境的ストレスなど複合的要因によるドパミンの過剰分泌(ドパミン仮説)が有力視されている.
・10歳代後半~30歳代前半の若年発症が多く,前駆期,急性期,消耗期,回復期,といった経過をたどる.
B診断
・幻覚(幻聴が多い),妄想,思考障害(話が滅裂になる),緊張病症状(突発的な興奮または昏迷),陰性症状(意欲や感情が低下する)などを呈する症候群である.
・「国際疾病分類第10版」(ICD-10)(本邦でもICD-11へ改訂予定)や「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-5)といった操作的診断基準に基づき,横断的症状評価に加え縦断的臨床経過も考慮し診断する.
・脳炎など統合失調症様症状を呈しうる身体疾患を十分に鑑別する.特に病前適応良好かつ急性発症,意識障害を疑うような事例には注意する.
◆治療方針
A薬物療法
過剰なドパミンを遮断もしくは調整する効果がある抗精神病薬による薬物療法が行われる.抗精神病薬全般に,QT延長症候群などの不整脈,悪性症候群,後述する一部の薬剤には耐糖能異常などの重篤な副作用のリスクがあるため,血液検査,心電図といった身体状態の評価も同時に行う.
初回エピソードでは,抗精神病薬の治療効果と副作用に対する感受性が高いことが知られている.そのため,より副作用の少ない第2世代抗精神病薬によ