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治療のポイント
・身体的要因を含む精神病症状を呈しうるほかの疾患との鑑別に加えて,統合失調症への移行を念頭におき,社会資源の利用を充実させ継続的にかかわる姿勢を大切にする.
◆病態と診断
・統合失調症や統合失調感情障害に加えて,妄想性障害,急性一過性精神病性障害,統合失調症型パーソナリティ障害,減弱精神病症候群(APS:attenuated psychosis syndrome)が挙げられる.
・妄想性障害は,単一あるいは相互に関連した一連の妄想が長期間持続する.中高年において多くみられ,妄想の内容は多様であるが,妄想に関連する行動を除けば,感情や言動,社会適応などは比較的保たれている.
・急性一過性精神病性障害は,数週以内に明らかな精神病状態に変化し,症状として幻覚や妄想は明らかだが,多形性(急速に変化する多彩で不安定な情動の混乱)を特徴とする.昏迷・無動・蝋屈などの緊張病を呈することもある.発症に急性ストレスが関与している場合があるが,統合失調症症状を示す場合は器質因や中毒因を除外し,症状の持続期間によって診断を行う.
・統合失調症型パーソナリティ障害は,生来より非常に風変わりな固定した思考や周囲との人間関係をもつことを特徴とする.統合失調症の病前性格あるいは軽症型ととらえる考え方もある.精神病症状を呈することがあっても短期間かつ断片的で,人格の崩壊をきたしにくく,ほかのパーソナリティ障害との鑑別が困難な症例も多い.
・APSは,完全に精神病性障害の判定閾値に達していない微弱な精神病症状を有する.近い将来に精神病を発症するリスクの高まった精神状態を予防的視点から定義した「精神病発症危機状態(ARMS:at-risk mental state)」に含まれる.
◆治療方針
A妄想性障害
患者の苦悩に真摯に耳を傾け,支持的に接することで信頼できる治療関係を構築する.統合失調症と比