今日の診療
治療指針

身体症状症
somatic symptom disorder
中尾智博
(九州大学大学院医学研究院教授・精神病態医学)

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ニュートピックス

・近日刊行予定のICD-11では,新たに身体的苦痛症の呼称が与えられる.DSM-5と同様,従来の身体表現性障害という呼称は用いられなくなり,「身体的苦痛症群または身体的体験症群(Disorders of Bodily Distress or Bodily Experience)」のカテゴリーが新設され,身体的苦痛症はその中核疾患となる.心気症は,ICD-11ではとらわれを主症状とする「強迫症または関連症群(Obsessive-Compulsive or Related Disorders)」のカテゴリーへと移行する.

治療のポイント

・身体症状症は頭痛,めまいなどの多様な身体症状が裏付けとなる十分な他覚的所見なしに出現するものであり,治療の基本は心理面へのアプローチである.

・うつ病や不安症でも類似の身体症状を呈するので鑑別診断に留意する.

・薬物療法は過剰にならない範囲で,心理療法の補助として用いる.

◆病態と診断

A病態

・身体症状症は頭痛,めまいなどの多様な身体症状が裏付けとなる十分な他覚的所見なしに出現するものである.

・従来は身体表現性障害とよばれていたが,DSM-5からは「身体症状症および関連症群(Somatic Symptom and Related Disorders)」という新しいカテゴリーが作られ,その中核疾患に位置づけられている.

・心身症(過敏性腸症候群やアトピー性皮膚炎など)との違いは,心身症では症状の発生や増悪に心的要因が大きくかかわるとともに,実際にそれらの症状の裏付けとなる医学的所見を伴う点にある.

B診断

・頭痛,めまい,倦怠感,動悸,吐き気,腹痛などの多様な身体症状が裏付けとなる十分な他覚的所見なしに出現し,患者に苦痛や機能障害をもたらしていることが診断の根拠となる.

・うつ病や不安症,知的障害でも類似の身体症状を呈することがあり,

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