GL統合失調症薬物治療ガイドライン(2015)
治療のポイント
・抗精神病薬の副作用に対しては,原因となっている抗精神病薬の減量やその他の抗精神病薬への置換が検討される.しかし,抗精神病薬の減量や置換をすることで,原疾患の統合失調症の精神症状が悪化する可能性があるため,個々の症例に応じた十分な検討が必要である.
・悪性症候群の場合には,直ちに抗精神病薬を中止し,全身管理が必要である.
◆病態と診断
A病態
・抗精神病薬に分類される薬剤は複数あり,すべて同じ薬理作用のプロファイルを有しているわけではないが,抗ドパミン作用は共通している.
・抗ドパミン作用による副作用として,パーキンソン症状に代表される錐体外路症状が挙げられる.なかでもアカシジアやジスキネジア,ジストニアは,いずれも原疾患である統合失調症による精神症状よりも時に苦痛を強いられる.
・ドパミン作動性経路の1つである隆起漏斗路において,ドパミンは下垂体からのプロラクチンの分泌を抑制している.抗精神病薬のドパミン受容体遮断作用により,プロラクチン分泌が抑制されなくなり,副作用として高プロラクチン血症が出現することがある.
・抗精神病薬によるセロトニン5-HT2A,2C 受容体拮抗作用やヒスタミンH1 受容体拮抗作用などに関連して,体重増加や耐糖能障害,脂質代謝異常といった代謝性障害が副作用として出現することがある.代謝性障害は,統合失調症患者の生命予後が不良である要因の1つとして考えられ,定期的なモニタリングが必要である.
・抗精神病薬によるα1 アドレナリン受容体遮断作用による起立性低血圧や転倒などが副作用として出現することがある.
・抗精神病薬により心電図のQTが延長することがある.機序としては,キニジン様作用で心筋細胞膜のKチャネルをブロックし,再分極が妨げられることが指摘されている.
・病的多飲水・水中毒の病態生理としては,抗精神病