今日の診療
治療指針

肘内障
pulled elbow
宮本英明
(帝京大学講師・整形外科学)

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治療のポイント

・前腕回外+肘屈曲,または前腕回内で容易に整復することができる.むしろこの操作で症状が改善しない場合は,診断を誤っている可能性を考える.

◆病態と診断

・肘内障は,上肢が軸方向に牽引されると,橈骨頭を取り巻き固定している輪状靭帯が近位へ転位し,腕橈関節内に嵌頓して生じる.

・5歳未満の小児に多く,2~3歳児にピークがある.

・典型的には幼児の手や腕を保護者が引っ張ることで受傷するが,寝返りや転倒でも生じる.また,「子供だけで遊んでいて,急に腕を痛がり動かさなくなった.どのように怪我をしたのかみていなかった.本人はまだ幼いため受傷時の状況を説明できない」など,受傷機転がわからないことも多い.その際は整復操作の前に骨折との鑑別が必須となる.

◆治療方針

 患児をリラックスさせるため,保護者の膝のうえに前向きに座らせ,整復操作を行う.

 患児の前腕をもち,回外+肘関節を屈曲させていく(小指を肩につける)方法と,前腕を(過)回内する方法が有効である.これら2つの整復方法に優劣はなく,どちらも安全に整復することができる.術者の母指で橈骨頭部分を触れておくと,整復感を触知しやすい.整復後はいったん診察室の外に出して保護者に観察させる.しばらくしたら再び診察室に入れて,前腕回内外ができるか,肘関節を屈伸できるかどうかを確認する.整復後の外固定は必要なく,自由に上肢を使ってもらう.

 過去の総説では,初診時整復不良例(複数回の整復操作にもかかわらず,上肢運動の改善がみられない症例)が2%程度あるが,三角巾などで外固定を行い,数日後の再診時には,全例で症状がなくなっている.観血的整復が必要となる症例はきわめてまれである.

■専門医へのコンサルト

・ほとんどすべての症例は整復後数分で問題なく上肢を動かすようになる.改善がみられない場合は整形外科専門医にコンサルトする.

■患者説明のポイン

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