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GL標準的神経治療:手根管症候群(2008)
治療のポイント
・臨床徴候と補助診断法による客観的所見から診断する.
・自然軽快例が存在することと手術療法が根本的で最も効果の高い治療法であることを念頭におき,保存療法から段階的に治療する.
◆病態と診断
A病態
・手根管症候群は,中年女性に好発する手関節部正中神経の絞扼性神経障害である.
・正中神経の絞扼の原因は,主に屈筋腱滑膜の浮腫もしくは増生が引き起こす手根管内圧の上昇による.
・性別/年齢以外の危険因子に,透析,肥満,糖尿病,甲状腺疾患,女性ホルモンの影響,高血圧,重労働がある.
B診断
・以下の特徴的臨床徴候と神経伝導速度検査で診断する.特徴的臨床徴候:正中神経領域のしびれ・感覚障害,夜間や労作時に増強する手のしびれ・痛み,母指球筋の萎縮・つまみ機能障害,手根管部正中神経叩打時に放散するしびれ(Tinel徴候),手関節掌屈持続によりしびれが増強(Phalen徴候)し,手を振ると軽快する(Flick徴候).
・補助診断法としてMRI所見や超音波検査が行われている.
・頸椎症や糖尿病性神経障害との鑑別が重要である.
◆治療方針
A保存療法
1)手関節の安静を目的とした装具療法(夜間のみの固定でも効果はある)
2)手根管内注射療法(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液1.65mgもしくはトリアムシノロンアセトニド8mgを1%リドカイン注射液2mLに混合して手根管内に注射)
3)正中神経領域のしびれと痛みが強い場合に内服治療を考慮する.
Px処方例
ミロガバリン(タリージェ薬)錠 1回10~15mg 1日2回
B手術療法
1.手術適応
保存療法に抵抗性のしびれ・痛み・機能障害,母指球筋の萎縮,重症の症例(参照:重症度分類:CTSI-JSSH,Bland分類).
2.手術方法
手根管開放術(つまみ機能の愁訴がある場合は母指対立再建