今日の診療
治療指針

化膿性脊椎炎(カリエス含む)
pyogenic spondylitis(including tuberculous spondylitis)
相澤俊峰
(東北大学教授・整形外科)

頻度 (ヨーロッパでは化膿性脊椎炎の年間発症率が5~6人/人口10万人と報告されている.2018年の国内の新規結核性脊椎炎は155人であった)

治療のポイント

・抗菌薬と局所の安静による保存療法が基本である.

・炎症所見の鎮静化と架橋仮骨の形成が治癒の目安である.

・麻痺の発現や椎体の高度の破壊があれば直ちに専門医にコンサルトする.

◆病態と診断

A病態

・細菌による化膿性脊椎炎,結核菌による結核性脊椎炎(脊椎カリエス)のほかに,真菌性脊椎炎や非結核性抗酸菌性脊椎炎もまれながらみられる.典型例ではメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA:methicillin-susceptible staphylococcus aureus)が起因菌であることが多い.

・人口の高齢化と,糖尿病や悪性腫瘍の既往,ステロイドや免疫抑制薬の使用などの易感染宿主の増加により年々増加している.

B診断

・症状は局所の疼痛と発熱が一般的であるが,病巣の局在,発症のタイプなどによりその程度はさまざまである.

・骨破壊がみられない時期でもMRI()で鋭敏に描出される.疑わしい場合に造影MRIの撮像を躊躇しない.

・典型的には椎間板を挟む上下椎体の骨破壊がみられ,血液検査での炎症所見,局所穿刺あるいは動静脈血培養での起因菌の同定から確定診断に至る.脊椎カリエスではT-スポットやクォンティフェロン,真菌を疑えばβ-Dグルカンも検査する.

◆治療方針

 保存療法が主体となるが,保存療法に抗する,高度な椎体の破壊,神経症状,傍椎体膿瘍が大きいなどの場合には手術療法を考慮する.

A保存療法

 化膿性脊椎炎では起因菌に感受性のある抗菌薬を使用する.起因菌不明な場合にはMSSAをターゲットとする.米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは,化膿性脊椎炎で6週間の抗菌薬使用が推奨されている.

 結核性脊椎炎では,イソニアジド,リファンピシン,エタン

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