今日の診療
治療指針

馬尾腫瘍
cauda equina tumor
土肥 透
(東京大学特任准教授・次世代運動器イメージング学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・腰椎硬膜内の馬尾に発生する腫瘍であり,ほとんどが神経鞘腫などの良性腫瘍である.

・診断にはMRIが有用であり,偶発的に発見される無症候性症例もみられる.

・腫瘍による馬尾神経圧迫により神経症状を呈する場合,手術治療を検討する.

◆病態と診断

A病態

・馬尾腫瘍とは,通常第2腰椎以遠の脊髄円錐部尾側の馬尾神経から発生する腫瘍である.組織型の多くが神経鞘腫であり,ほかに粘液乳頭状上衣腫,神経線維腫などがあり,まれなものでは髄膜腫,傍神経節腫,類上皮腫,類皮腫などの報告がある.

・馬尾腫瘍の多くは良性腫瘍であり,悪性のものは神経線維腫症患者にみられる悪性神経鞘腫などに限られる.

・症状は腫瘍サイズに依存し,小さい腫瘍では無症候性や軽度の腰背部痛のみの場合もある.

・腫瘍が増大すると馬尾神経を圧迫することにより麻痺や筋力低下などの下肢運動障害,しびれ・疼痛などの感覚障害,膀胱直腸障害などの神経症状が出現することがある.また咳嗽,くしゃみ,いきみなどの胸腔圧や腹圧の変化により,神経症状が出現・悪化するなどの特徴もみられる.

B診断

・診断には単純X線,単純・造影CTやMRIが行われるが,そのうちMRI検査が最も有用である.

・MRI検査では,腫瘍の組織型の鑑別目的にガドリニウム(Gd)造影MRI検査を実施することが望ましい.

・最も頻度の高い馬尾腫瘍である神経鞘腫のMRI画像所見をに示す.T1強調像では脊髄と比較して等信号,T2強調像では内部が不均一な高信号を示し,Gd-DPTA増強T1強調像では不均一に造影されることが一般的である.

◆治療方針

A経過観察

 神経鞘腫などの良性腫瘍の可能性が高く,無症状の場合は経過観察とし,定期的なMRI検査によるフォローアップを行い,その後増大傾向がないか経過をみていく.ただしほかの組織型の腫瘍,例えば粘液乳頭状上衣腫や髄膜腫などが強く疑わ

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