今日の診療
治療指針

膀胱腫瘍
bladder cancer
武藤 智
(順天堂大学医学部附属練馬病院泌尿器科・教授)

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GL膀胱癌診療ガイドライン2019年版

ニュートピックス

・2021年,抗PD-1抗体薬または抗PD-L1抗体薬による治療歴があり,かつ,術前または術後の補助化学療法として,あるいは局所進行または転移した状態において白金製剤による治療歴のある,局所進行性または転移性尿路上皮癌に対する薬物としてエンホルツマブベドチンが発売され,薬物療法の選択肢が増えた.

治療のポイント

・正確な組織型を含む病理診断と病期診断から,治療法を適切に選択する.

・手術療法の進歩に伴い侵襲性は大幅に低下している.現在認められている最新の術式を選択する.

・薬物療法の進歩により選択できる薬剤は増えているが,個々の患者にとってどの治療がメリットになるか十分に検討して治療を開始する.

◆病態と診断

A病態

・膀胱癌の患者には高齢者が多く,新規症例のうち約50%は65歳以上である.また,男性のほうが女性より約4倍頻度が高い.

・リスク因子としては,喫煙,芳香族アミンなどが知られている.

・膀胱癌は深達度によって,筋層非浸潤性と筋層浸潤性の大きく2つに分けられる.筋層非浸潤性は全体の60~70%である.

B診断

・最も多い症状は無症候性肉眼的血尿であり,約80%の症例に認める.

尿細胞診,尿中分子マーカー(NMP-22,BTA test)などは非侵襲的なスクリーニング検査として用いられる.

・確定診断は膀胱鏡で行う.

・画像診断で臨床病期分類を行う.造影CTではリンパ節も含めた転移の有無,造影MRIでは局所深達度診断,PET/CT検査では臓器転移検査が可能である.

◆治療方針

 筋層非浸潤性膀胱癌に対する治療の中心は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT:transurethral resection of bladder tumor)であり,一部膀胱内注入療法を併用する.

 浸潤性膀胱癌に対しては膀胱全摘除術が中心であり,転移性膀胱

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