ニュートピックス
・「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」以降,急性単純性膀胱炎の治療においても尿検査でグラム陰性桿菌またはグラム陽性球菌を確認し,エンピリックセラピーを開始するよう推奨されている.
・陰性桿菌において基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌のみでなくキノロン耐性菌の割合が年々増加する傾向にあるため,グラム陽性菌が多く認められる閉経前女性においてもキノロン系薬の使用は抑制していくべきである.
治療のポイント
・閉経前女性と閉経後女性の違いを考慮し,可能なかぎり尿沈渣検鏡やフローサイトメトリーによる原因菌推定に基づいた抗菌薬を選択すべきである.原因菌が不明の場合には,アモキシシリン・クラブラン酸を第1選択とし,ESBL非産生グラム陰性桿菌が疑われるか検出されている場合にはセフェム系薬,グラム陽性球菌が疑われるか検出されている場合にはキノロン系薬を投与する.
・症例により,ESBL産生菌に有効とされる経口抗菌薬ファロペネム,ホスホマイシンなども有効に使用する.
・閉経後女性および複雑性膀胱炎においては耐性菌が検出される頻度が高いため,抗菌薬投与前に尿培養および抗菌薬感受性試験を施行する.
◆病態と診断
A病態
・急性単純性膀胱炎は20~40歳代の性的活動期の女性に最も多い細菌性尿路感染症である.
・急性単純性膀胱炎の原因は,尿道から上行性(逆行性)に細菌が尿路に侵入することである.起炎菌は大腸菌をはじめとする直腸常在細菌である.
・複雑性膀胱炎は尿路先天性疾患,排尿障害,または体内異物に起因する場合に付随して発症する尿路感染症である.糖尿病,免疫不全状態など全身疾患に起因する易感染性も複雑性膀胱炎発症のリスクとされている.
・細菌が証明されない場合には,ウイルス性,薬剤性,放射線性などを原因に血尿を主症状とした膀胱炎,または結核性膀胱炎,膀胱癌などを想定する.
B診断
・症状として
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