今日の診療
治療指針

壊死性筋膜炎
necrotizing fasciitis
中村裕之
(市立釧路総合病院・副院長)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・早期診断,早期の他科連携が重要である.

・Surviving sepsis campaign guidelinesに則った敗血症の治療が必要である.

・早期の抗菌薬治療および外科的介入が必要である.

◆病態と診断

A病態

・浅層筋膜を病変の中心とする重症細菌感染症.急速に進行してショック状態に陥ることがある.

・少なくとも1種の嫌気性菌と好気性菌との混合感染によって起こり,高齢者や基礎疾患を伴う症例に多い.しばしば組織内にガスを認めうるtype1と,単一細菌による感染症で基礎疾患のない,すべての年齢層に発症しうるtype2がある.

・細菌感染後,近傍の動静脈に血栓を生じ,皮下組織は壊死化する.皮表では紫斑・血疱がみられるが,初期にみられないこともある.

B診断

・早期診断のポイントとして以下が挙げられる.

1)心拍120以上/分,低血圧などの全身症状がある.

2)皮膚症状と乖離のある激痛,または紅斑を越えた範囲の激痛がある.

3)検査上,CPK上昇,CRP>15mg/dL,LRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)スコア≧6,プロカルシトニン強陽性などを認める.

4)紫斑・血疱があれば参考になる.

・単純X線撮影,超音波検査,CT,MRIは,炎症の範囲やガス産生の有無を確認するのに有用だが,試験切開や手術を優先すべきときもある.

◆治療方針

 壊死性筋膜炎が疑われる場合,すみやかな抗菌薬投与を含めた全身管理を行いつつ,早急に手術を行う必要がある.適切に治療されなければ死亡率30~70%の致死性疾患である.

A薬物療法

 抗菌薬投与が中心となる.

1.起炎菌判明まで広域抗菌薬使用

 グラム陽性球菌,グラム陰性桿菌,嫌気性菌に対する抗菌薬選択が必要である.

Px処方例 下記1)と2)を併用する.MRSA関与が疑

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