今日の診療
治療指針

ケロイド,肥厚性瘢痕
keloid,hypertrophic scar
天野正宏
(宮崎大学教授・皮膚科学)

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GL形成外科診療ガイドライン 3 2021年版 第2版 創傷疾患

治療のポイント

・ケロイドと肥厚性瘢痕では大きく治療方針が異なる.

・治療は整容的問題,かゆみや痛みなどの症状,拘縮など運動障害が生じた場合に考慮する.

・安易な外科療法は再発や増悪するため避け,専門医へ相談する.

◆病態と診断

A病態

・ケロイド,肥厚性瘢痕は創傷治癒過程で線維芽細胞や膠原線維,毛細血管の過剰な増生から生じる.

・発生には体質(人種,性ホルモンなど)も関与するが,創傷の深さ創傷治癒にかかる時間(3週間以上),創傷の部位(前胸部,肩甲部)など局所要因も関係している.

B診断

・肥厚性瘢痕は創面に一致し赤く隆起し硬化するも数年以内に赤色調が消え軟化するが,ケロイドは創面を越えて赤く拡大,隆起し中央部はしばしば退色,消退傾向を示す.

・ケロイドは痤瘡や注射部位など比較的軽微な創傷からも生じる.

◆治療方針

A予防

 創部の安静,圧迫,固定が重要である.レストン(体圧分散用パッド)などを貼付しサージカルテープなどによる圧迫固定を数か月継続する.シリコーンゲルシートも効果がある.

B薬物療法

Px処方例

1)クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)クリーム 1日2回 塗布

2)フルドロキシコルチド(ドレニゾン)テープ 1日1回 貼付

3)トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A)皮内用関節腔内用水懸注(50mg/5mL/V) 1回1Vを1%キシロカインと混じて2~5倍に希釈し2~4週ごとに局注

4)トラニラスト(リザベン)カプセル(100mg) 1回1カプセル 1日3回

C外科療法

1.肥厚性瘢痕

 瘢痕拘縮など関節の可動域制限を伴う場合は瘢痕を切除し,Z形成術,W形成術や植皮術を行う.

2.ケロイド

 保存的治療を優先するが,施設によりケロイド切除後に放射線(電子線)を20~30グレイ程度照射している.放射線治療

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