頻度 (軽症~重症の低酸素性虚血性脳症は先進国において1,000出生あたり1.6例の発生)
GLJRC蘇生ガイドライン2020
治療のポイント
・低体温療法の適応があると考えられる新生児の蘇生にあたる場合には,迅速に低体温療法が行える高度医療施設へ連絡し,搬送を検討する.
◆病態と診断
A病態
・低酸素性虚血性脳症は,出生前の胎盤血流の遮断などにより,胎児もしくは新生児の脳が低酸素と虚血状態に陥ることにより引き起こされる脳症の総称である.
・脳性麻痺,発達遅滞,てんかんなどの後遺症の原因となる.
B診断
・以下の基準Aと基準Bを満たす場合,低酸素性虚血性脳症と診断する.
1)基準A:周産期の低酸素・虚血を示唆する所見があるか?(以下のいずれか1つを満たすか):①Apgarスコア10分値≦5点,②10分以上の持続蘇生,③血液ガスpH<7.0 or BE≦-16
2)基準B:脳症の所見を認めるか?:Modified Sarnatスコア(図)で意識,自発運動,姿勢,筋緊張,原始反射,自律神経の6項目のうち,軽症1項目以上が当てはまれば軽症脳症,中等症あるいは重症に当てはまる症状が3項目以上あれば中等症以上の脳症と判定される.中等症か重症かの判定はどちらの重症度の項目が多いかで決める.
・Modified Sarnatスコアで中等症以上の脳症あるいは「けいれん」がある場合,以下の除外基準に当てはまらなければ,低体温療法の標準的な適応となる.
・除外基準:在胎36週未満/体重1,800g未満,冷却開始時で生後6時間を超えている,全身状態から冷却によるリスクが利益を上回る,冷却に支障をきたす先天異常がある.
◆治療方針
生命予後,神経学的予後の改善のため,すみやかに全身状態を安定させ,低体温療法の適応となる症例を適切に選択し,適応症例では安全かつ迅速に冷却を開始する.また,低血糖の予防と治療,けいれん発作のコント