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治療指針
小児

起立性調節障害
orthostatic dysregulation(OD)
石崎優子
(関西医科大学総合医療センター教授・小児科)

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GL小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン(2015)

ニュートピックス

・COVID-19感染拡大によるロックダウンや自粛生活で,起立性調節障害(OD)症状を呈する患者が増えている.

治療のポイント

・患者・保護者が病態を理解し,症状と付き合うことを目指す.

・非薬物療法と薬物療法とがあるが,海外のガイドラインでは水分摂取や運動療法などの非薬物療法の推奨度が高い.

・水分は1日1.5~3L,運動は臥位もしくは半臥位から始めて徐々に強度を上げる.

◆病態と診断

A病態

・起立時の循環の代償的調節機構が破綻して,下肢の静脈の収縮不全により循環不全となり,頭部への血流が減少すると,立ちくらみや吐き気,めまい,眼前暗黒感,失神などの症状を呈する.午前中に,強い倦怠感や頭痛・腹痛,動悸,集中力低下,長時間同じ姿勢を続ける際の気分不良もみられる.季節の変わり目や天候不順によっても症状が悪化しやすい.

B診断

・丁寧な問診と鑑別診断,起立試験により診断する.

・立ちくらみや失神,全身倦怠をきたす基礎疾患を除外する.心原性失神をまず除外し,てんかんも見落としてはならない.

・診断の決め手は起立試験である.日本小児心身医学会の「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」では,①起立直後に低血圧を呈し元の血圧に回復するのに時間がかかる起立直後性低血圧,②血圧低下なしに著明な頻脈を呈する体位性頻脈症候群(POTS:postural orthostatic tachycardia syndrome),③起立中に頻脈をきたし突然の血圧低下と失神をきたす迷走神経性失神,④起立後徐々に血圧が低下する遷延性起立性低血圧の4つに分類される.

◆治療方針

 基本は疾病教育を含む非薬物療法である.

A疾病教育と生活習慣

 症状のメカニズム,増悪因子,好ましい生活態度を指導する.血圧は昼夜逆転の影響を受けるため,睡眠覚醒のリズム

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