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治療のポイント
・診断後すみやかに経口鉄剤の処方を開始し,並行して食事指導も行う.
・内服開始後,遅くとも1か月(重度貧血ほど,より早期に確認必要)までに,内服アドヒアランスとともに貧血改善を採血で確認する.
・通常,内服開始後2~3か月とされるフェリチン正常化(20ng/mL以上)後に経口鉄剤は中止し,さらに中止後3~6か月までフェリチンの低下がないことで食事指導の徹底が確認でき,外来フォローを終了できる.ただし月経に伴う出血量の多い思春期女子は,鉄剤の継続内服が必要な場合もある.
・上記経緯が一般的であるが,おもわしくない経過の場合には小児血液専門医にコンサルトする.
◆病態と診断
A病態
・鉄の需要と供給のアンバランスにより発症する.
・生後9か月~2歳(特に母乳栄養児で離乳食摂取が進まない場合ほぼ必発)と,月経開始となった思春期女子に好発である.
・早産児は母体胎盤経由の鉄移行が不十分なため,乳児期前半から貧血を呈する.
・幼児・学童期の牛乳が栄養の中心となった牛乳貧血,思春期の過度なダイエットや激しいスポーツが背景になっている場合もある.
B診断
・貧血に起因した酸素欠乏症状(不機嫌,活気がない,倦怠感,易疲労感など)が知られているが,徐々に進行するため生体適応によりHb8g/dL未満になるまでは症状として現れにくい.鉄欠乏症状(匙状爪,異食症,Plummer-Vinson症候群など)を呈する場合もある.
・末梢血液検査〔RBC,Hb,Ht,MCV,MCH,MCHC,赤血球分布幅(RDW),Plt,WBC〕に加えて,鉄動態〔Fe,鉄結合能(TIBC)もしくは不飽和鉄結合能(UIBC),フェリチン〕を検査する.
・月齢・年齢によりHb値による貧血の定義は異なるが,生後6か月以降11g/dL未満はすべての時期で貧血の判断となる.鉄欠乏性貧血(IDA:iron deficiency
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