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GL形成外科診療ガイドライン6巻「頭頸部・顔面疾患」第Ⅲ編 眼瞼下垂症(2019)
治療のポイント
・神経性か否かを鑑別することが,生命予後の観点から重要である.
・原因疾患の治療で改善しない眼瞼下垂に対しては,手術が適応となる場合がある.
・挙筋機能に基づき術式が選択される.
◆病態と診断
A病態
・眼瞼下垂では上眼瞼が下垂することで視野狭窄をきたす.定量的評価にはMRD-1(margin reflex distance-1)と挙筋機能が用いられる.MRD-1は第一眼位での角膜反射(瞳孔中心)と上眼瞼縁の距離,挙筋機能は下方視時から上方視時に上眼瞼縁が動く距離を指す.MRD-1は3.5mm以上,挙筋機能は10mm以上が正常値である.
・眼瞼下垂は先天性と後天性に大別され,さらに後天性は原因により神経性(神経原性,神経筋接合部)と筋・皮膚性(筋原性,腱膜性,機械性など)に分類される.
B診断
・神経性は両眼開瞼下での複視の有無や瞳孔不同が鑑別の参考になることがある.
・腱膜性は重瞼溝高位・挙筋機能正常から診断される.
・眼瞼腫瘍や眼瞼の炎症があれば機械性である.
◆治療方針
まずは原疾患の治療を行う.本項では特に生命予後に影響しうる疾患について簡単に触れた後,眼瞼下垂の手術選択について述べる.
A動眼神経麻痺
1.原因とリスク
原因は虚血性,先天性,外傷性,圧迫性などがある.内頸動脈-後交通動脈分岐部脳動脈瘤による圧迫性は,くも膜下出血に移行するリスクがある.
2.治療選択
瞳孔不同を伴った動眼神経麻痺は脳動脈瘤の可能性が高いため,急変時に対応できる診療科の管理下で精査すべきである.虚血性が原因の場合は自然軽快が期待できる.数か月経っても改善しない動眼神経麻痺に対しては,眼瞼下垂手術・斜視手術が検討されることもある.
B重症筋無力症(MG:myasthenia gravis)
「重症筋無力症」