今日の診療
治療指針

口腔の悪性腫瘍
malignant tumor of oral cavity
桐田忠昭
(奈良県立医科大学教授・口腔外科学)

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GL口腔癌診療ガイドライン2019年版 第3版

治療のポイント

・治療は原発部位や組織型により若干異なるが,外科療法による完全切除が根治療法の基本である.

・進行例においては,通常広範囲切除と同時に各種再建術が施行され,頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術が施行される.

・術後病理組織学的検索により再発リスク因子が認められた場合は,放射線療法もしくは放射線療法と薬物療法との併用による術後療法が通常施行される.

・口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)の病態を知り,悪性化リスク因子を考慮した対処が必要である.

・再発・転移口腔扁平上皮癌には,免疫チェックポイント阻害薬も用いられ,治療選択肢が広がるとともに全生存期間の有意な改善が認められている.

◆病態と診断

A病態

・口腔の悪性腫瘍は扁平上皮癌が約90%を占め,残りが唾液腺癌や非上皮性悪性腫瘍であり,悪性黒色腫,悪性リンパ腫,肉腫,歯原性癌腫などが占める.そのため治療は圧倒的大多数を占める扁平上皮癌が主体となる.

・口腔扁平上皮癌の臨床症状は,発赤やびらん,疼痛,潰瘍,出血,抜歯後治癒不全などであり,大多数の症例で硬結を触知する.肉眼的には,主に表在型,外向型,内向型の3型に分類される.

・初診時頸部リンパ節転移頻度は8~48.2%とされ,舌癌,口底癌,頬粘膜癌,内向型および進行例,深達度(DOI:depth of invasion)が深いものほど頻度は高い.

・口腔粘膜の悪性化の危険性を有する口腔潜在的悪性疾患(OPMDs:oral potentially malignant disorders)があり,主に白板症と紅板症が挙げられる.癌化率は白板症で0.1~34.0%(平均経過観察期間2~20年)と観察期間が長期になるにつれ悪性化率は高くなり,紅板症では14.3%(平均観察期間2年未満),50%(平均観察期間10年以上)とOPMDsのな

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