今日の診療
治療指針
在宅

内服ができなくなった場合の対応(在宅コンフォートセット)
home hospice emergency kit for ill patients
首藤真理子
(みなとホームケアクリニック・院長(東京))

治療のポイント

・患者の余命が1週間程度となると,内服が困難となるため,苦痛症状をコントロールするために必要な薬剤は投与経路の変更が必要となる.

・終末期によくみられる症状としては,疼痛,せん妄,呼吸困難,死前喘鳴などがある.

◆病態と診断

・オピオイドの定期内服ができなくなると,疼痛の増強,退薬徴候が起こるため,内服以外の投与経路への変更が必要となる.急に内服が困難になることが想定される場合は,モルヒネ坐剤を自宅に準備しておく.

・ステロイドが内服できなくなった場合は,ステロイド離脱症候群が出現することによる苦痛を考慮し,必要に応じて注射剤へ変更する.

◆治療方針

 自宅で最期まで過ごすためには,予測される症状に対する適切な薬物選択と,内服が困難となった際の投与経路の変更が必要となる.

Aオピオイドの内服ができなくなった場合の疼痛コントロール

 以下の5つの経路から投与可能である.

1.静脈内投与

 速く確実に薬物を投与できる方法で,急激な痛みの増強にもすみやかに対処できる.末梢血管からの投与では点滴漏れが懸念され,再確保が困難なことも少なくない.在宅緩和ケアでは中心静脈カテーテルまたはポートを設置されている患者で行うことが多い.

2.皮下投与

 鎮痛効果は静脈内投与と同等である.点滴ルートが確保されていない場合に有用で,点滴漏れの心配もない.持続皮下投与の場合,投与量は1mL/時以下が望ましいとされ,投与量に限界がある.

3.経皮吸収投与

 フェンタニルパッチを使用する.皮膚に貼付するだけで侵襲なく鎮痛効果が得られ,便秘などの副作用が少ない.半減期が約17時間と血中濃度の上昇が緩徐であり,調節性に乏しく,至適なパッチサイズ決定に時間がかかる.

4.舌下投与

 フェンタニル舌下錠を使用する.臼歯の歯茎と頬粘膜の間に入れて使用する製剤(バッカル錠)もある.モルヒネやオキシコドンの速放製剤より効果発現が早く,

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